| 風が渡るように彼らは駆けていく 立ち止まることを知らない、誰にも束縛されない その生命は世界を越えていく ただそれに気付くものは少ない 超えた先にある世界と、それまでいた世界の 差異はあまりにも小さすぎて… 時には震える幼子に 時には勇猛果敢な戦士に 時には深窓の令嬢に 時には草原を駈ける百獣の王に 時には裏世界の住人へ 時には夢見がちな少年へ 時には目にとまることのない小さな雑草へ 時には疲れ果てた老人へ… 世界を越えた生命たちは それとは気がつかぬまま、ありとあらゆる物になる そして魂を共有する そこに制約はない 風をしばることなど、誰にもできないのだから これまでも そしてこれからも… たとえそれがはっきりとわかることができても 生命は何も与える事はなく ただその生き様を通し、生命自体がそこから学ぶのみ 生命体は 一晩だけの旅人となる 彼らは駆け抜けていった 遠い日の草原も、ずっと先の日の丘も 振り返る事はない これから起こる事で 彼らは心がいっぱいなのだから 旅人たちよ 二度ど来ない今を 大切に駈けぬけて行け… |